先日、福山市での夜間セミナーに参加してきました。なかなか日程が合わずセミナーに参加できないことが多いのですが、今回は内容が当院で力を入れている「麻酔」に関することだったので、なんとしても調整して参加してきました( ;∀;)

「麻酔科医」というのは人医療では一般的ですが、獣医療ではそうではありません。獣医師自身の麻酔に対する知識・理解が不足していることもあり、軽視されていました。セミナーの講師をしてくださった先生は、獣医療界で麻酔専門医として独立起業し、麻酔知識・技術の普及に努めてくださっています。

 

今日は予防歯科処置での麻酔と、そのリスクについて当院の考え方・考えていることを書いていきます。

大きな病気を持っていない12歳までのわんちゃんねこちゃんであれば、「命がけ」にならずに歯をきれいにすることができます。その結果、それから先の犬生・猫生を快適に生活させてあげることができます。

 

飼い主さんが、家族である動物に全身麻酔を受けさせることを決断するのは勇気のいることだと思います。動物の負担を減らすために、早くに行うことで「麻酔は命がけで行うもの」という考え方から脱却することができます。

 

冒頭の麻酔セミナーに参加した際、講師の先生が僕がおぼろげに感じていたことを言葉にしてくれました。「昔は麻酔は『生きるか死ぬか』、という感覚で行われていたが、現在では『いかに元気な状態でお家に帰してあげるか』、という考えで行うべき。そのための麻酔計画と周術期管理(麻酔中だけではなく麻酔前、麻酔後のケアも大事→以前のブログに書いてありました。抜歯について:全身麻酔編④)が重要である。」

当院ではこの考え方を実践していきます。

 

 

なぜ早くに全身麻酔をかけて予防歯科処置をオススメするのか、3つの要因があると思います。

1.進行した歯周病により何らかの症状(元気がない、食欲がないetc)が出ると麻酔に対するリスク評価(ASA分類)のステージが1つ上がり、麻酔事故の危険性が高くなります。→抜歯について:全身麻酔編②

そのため麻酔をしないとできないもの(予防歯科処置)であれば、明らかな症状の出ていない早くに麻酔をかけてあげることで無駄に麻酔のリスクを上げずに済みます。

 

2. 1.と関連するのですが、本人の状態で麻酔をかける目的が変わってしまいます。

元気な早いうちであれば、これからの生活を元気に快適に過ごさせてあげるための、未来を見据えた目的のための麻酔です。一方、食べられなくなり痩せてしまっていて、元気もないような子ではまさに今、生きるか死ぬかの状態です。だけどやらないと死んでしまうから、麻酔をかけるかどうかの人間の判断は迷うことは少ないと思います。たた、判断を先延ばしにしてそんな状態になるまで待っている間、わんちゃんねこちゃんはずっとしんどい思いをしなくてはいけません。また点滴入院も必要になり、費用も高額になります。動物がしんどい思いをしないで済むようにしてもらえたらと思います。

 

3.症状が出るほど進行した歯周病では、症状を改善するにはその歯は抜歯するしかありません。早くに予防歯科処置をしてあげると、歯を残してあげられるかもしれません。ご飯を食べられてさえいれば大丈夫と安心してしまうでしょう。しかし、そんな状態でたべるご飯は膿の味がしておいしくないと思いませんか?

 

 

早くにスケーリングすることで本人の負担も少なく、麻酔のリスクも少なくすることができます。当院では12歳まで、重大な基礎疾患のない犬猫には快適な生活を送らせてあげるために早めの予防歯科処置を提案しています。

わんちゃんねこちゃんの口の中をみたことがありますか?歯に茶色い歯石が付いてきている子は歯周炎・歯槽膿漏になる前に予防歯科処置を検討してあげて下さい。費用はこちら→7kg以下の小型犬に強く歯科処置を勧める理由とは?

 

 

PS.積極的な鎮痛処置を行うことで、全身麻酔薬の量を減らすことができ、体に対する悪影響をできるだけ減らすことができます。当院では麻薬性鎮痛剤による鎮痛だけでなく、局所麻酔薬を用いた鎮痛処置を積極的に行うことで、全身麻酔の安全性向上、術後早期の回復に努めています。