「早くにしてあげた方がいいのは分かってるんですけどね~。家族で相談してみます」

歯の相談に来ていただいた方に歯石除去と悪い歯の抜歯を勧めると、こう言ったまま放置されることも多いです。確かに今現在は食事も摂れていて元気もある(飼い主さんがそう思っているだけかも?)ので、わざわざ麻酔をかけて費用もかかって行う歯科治療に対して二の足を踏んでしまう気持ちはわかります。(本文最後に料金の目安を載せています)

今回は、「そうは言ってもこれ以上は待てないよ!」これだけは避けて欲しいこと【わんちゃん編】を書いていきます。

 

どうしようもなくなる一歩手前、できれば今すぐにあなたの愛犬の歯周病チェック、歯周病治療を決定してもらえたらと思います。手遅れになる前に歯周病を治してあげましょう。

7kg以下の小型犬種と生活している方で、歯周病治療に対してふんぎりがつかない、決断しきれないご家族の背中を押してあげられたらと思います。

 

話は7~8年前にさかのぼります。

僕が大学を卒業して動物病院で臨床医として働き始めた頃、あるわんちゃんが診察に来ました。10歳、去勢オス、3kgのトイプードル。数日前からごはんをあまり食べない、とのことです。身体検査をしていくと、明らかに歯が悪い。重度の歯周病で、飼い主さんも口が悪くて食べにくいのだろうと思って来院してきたようです。麻酔前の血液検査、胸部レントゲン検査では特に大きな異常も認められず、早速麻酔をかけて歯科処置を行うことになりました。当時は全身麻酔後に、超音波スケーラーで歯石除去を行い、触ってぐらつく歯(動揺歯)だけ抜歯していました。麻酔から問題なく覚醒し、「きれいになりましたよー」と無事お家に帰ってもらいました。ところが3日後、帰ってからもご飯をほとんど食べない、と再来院。見ると右顎が腫れています。その部分をレントゲン撮影してみると。。

 

大きい矢印のところで骨折しています。下顎第一後臼歯の周りで重度の歯周病により骨が溶けて黒く抜けて見えます。歯石除去の際に無茶な操作はしていませんが、骨が溶けてしまっていたため、その部分で容易に骨折してしまったようです。その後、他院にて骨折を固定する処置をしてもらいましたが、この子の骨折は治りませんでした。最終的には右顎はぷらんぷらんの状態でしたが、その状態でのごはんの食べ方を覚えてくれてそのまま経過をみていくことになりました。

 

この子のポイントは、これだけ重度の歯周病(歯槽骨の垂直吸収)があるにも関わらず歯の動揺は認められなかったことです。第一後臼歯は2本の歯根でアゴの骨にくっついているため、歯根の1本がグラグラだったとしても、もう1本がしっかりしていると歯はぐらつきません。

このことがあって以降、歯科処置をする際には必ずレントゲン撮影とデンタルプローブを用いて歯槽骨の状態をチェックするようになりました。歯周病は見た目だけではわかりません。また健康な骨ではなく、歯周病でもろく細くなってしまった骨は骨折してしまうと治癒し難いです。上顎の歯周病は骨折することはないためなんとかなりますが、下顎は今回のようにどうしようもなくなってしまいます。

 

小型犬の歯周病で気を付けて欲しいポイントは3つあります。

1:歯周病は歯自体の病気ではなく、歯の周りのアゴの骨が溶ける病気だと認識すること

2:特に7kg以下の小型犬は歯石が付きやすく歯周病になりやすいです(理由はまた後日のブログにてお伝え予定)

3:また7kg以下の小型犬では下顎骨に対して歯根の占める割合が多くなっていて、根尖(歯の根っこの先)から先の下顎骨がとても薄いです。そのため歯周病になってしまうと容易に下顎骨折を起こす危険性があります。

重度の歯周病の場合、上顎の歯周病はなんとかなりますが、下顎は大変なことになってしまいます!

 

24kg ラブラドールレトリバー

両矢印の距離が広く(8.8mm)安心感がありますね♪

 

3kg トイプードル

両矢印の距離は1-2㎜しかありません。ちょっとしたことでポキっと折れてしまいそうです(゚Д゚;)

 

 

 

7kg以下の小型犬種は歯周病により容易に下顎骨折を起こす危険性があります。

ご飯が食べられているから(痛みは感じています!)、とそのまま様子をみていると、ある日急にご飯が食べられなくなるかもしれません。そして元には戻せない、運よく戻せたとしても本人に相当の負担がかかり、高額の治療費(20万円とか)が必要になります。

 

歯周病は口が臭くなるだけの病気ではありません。一度ご相談下さい。診察した結果、抜歯してあげた方が良いよと僕からお話した子はできるだけ早く、手遅れになる前に歯科治療を受けてもらえたらと思います。最低、下顎の第一後臼歯だけはチェック・処置させていただきたい”(-“”-)”

 

 

〇当院での治療例(税別)

3kg、トイプードルの場合

術前検査で10,000円くらい

A. 軽度歯周病で歯石除去のみなら18,000円くらい

B. 重度歯周病でたくさん抜歯(ドリルによる分割抜歯)もするようなら鎮痛剤の点滴入院(1泊)を入れて70,000円くらい

C. あまりオススメではないが、重度歯周病で歯石除去と左右下顎第一後臼歯のみ抜歯(ドリルによる分割抜歯)、日帰り手術なら30,000円くらい

あなたの愛犬がしんどい思いをせずに済みますように。