コラム

寝てるときに「いびき」をかいていませんか?

あたなのわんちゃんは
・寝るときガーガーいびきしていませんか?
・少し動いただけで舌を出してハァハァ呼吸が荒くなっていませんか?(パンティングと言います)
 
これらの症状がある子は「軟口蓋過長症」になっているかもしれません。
というか、いびきをしている子は少なくとも軟口蓋過長症は持っていると
考えた方が良いです。
他の病態も併発・続発しているかもしれません。
(外鼻孔狭窄、喉頭小嚢外転、咽頭虚脱、喉頭蓋後傾、喉頭麻痺、喉頭虚脱etc)
まずは軟口蓋過長症のお話をします。
 
〇いびきをかく原因
 
喉の奥に人の「のどちんこ」のように垂れ下がってる「軟口蓋」があります。
この軟口蓋が厚く・長くなっていると、寝ているときに気道に入り込んでしまい、
空気の通り道が狭くなって「いびき」音が出るようになります。
人の「睡眠時無呼吸症候群」のような状態です。



Findji L, Dupre G. Folded flap palatoplasty for treatment of elongated soft palates in 55 dogs. Vet Med Austria. 2008;95:56–63.


また空気の通り道が狭くなっているため、呼吸がしづらい状態です。
その結果、体温調整が難しい可能性があります。
(犬は人のように汗をかかず、口を開けて呼吸することで体温を下げています)
 
以上、まとめると軟口蓋過長症の問題点は3つあります。
①いびき
②呼吸がしづらい・息苦しさ
③体温調整がしづらい、熱中症の危険性
これらの症状は放置すると、どんどん悪化する可能性があります。
詳しい話は今後のコラムでご紹介します。
 
 
〇治療法・悪化させないために
 
急に状態が悪化し、呼吸困難や熱中症になったときには
酸素吸入や体を冷やすこと、抗炎症薬を使うことで状態を安定させますが、
根本的な治療は手術になります。
厚く長くのびた軟口蓋を短くすることで
軟口蓋過長症は治り、それ以上呼吸状態が悪化することを防ぐことができます。

<手術前>



鉗子でつまんでるのが厚く長くのびてる軟口蓋です。
気管チューブのまわりが塞がれています。

<手術後>

厚く長く伸びてる軟口蓋を切除・縫合した後です。
気管チューブのまわりにスキ間ができて
これなら楽に呼吸ができそうです☆


〇まとめ

軟口蓋過長症は先天性(生まれつきの病気)の場合が多く、
小さいころからいびきをかいていることが多いです。
当院では生後半年頃に去勢・避妊手術する際にいびきの有無を確認し、
いびきがある子では一緒に手術をすることがほとんどです。
 
できれば「いびきがある子」は全頭手術してあげて欲しいのですが、
なかなか手術までは思い切って決断できないですよね。
歯石除去、腫瘍切除手術、胆嚢切除術など
何かで全身麻酔をかける機会があれば、
その際に手術することが多いです。
 
いびきをかく子は麻酔のかけ始めや麻酔から覚醒させるときに
のどが詰まって息ができなくなります。
軟口蓋を切除しておくと、
安心して麻酔から覚醒することもできます(^^)

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